Materials Matter Standard 略語・用語一覧(全 70 項目)
1. Materials Matter 規格の構造と考え方(11 項目)
MMS — Materials Matter Standard / マテリアルズ・マター規格
Textile Exchange が 2025年12月12日に公表した原料生産・一次加工向けの新規格(TE-MM-STN-101-V1.0)。7つの Principle と 36 の Theme で構成されます。
▸ 註釈:2026年12月31日から適用可能(審査が実施可能)、2027年12月31日から全審査が MMS で行われます。GRS・RCS・RWS・RMS・RAS を置き換える規格です(A1.1.1〜A1.1.3, p.6)。
TE — Textile Exchange / テキスタイル・エクスチェンジ
MMS を所有・運営する国際非営利団体。GRS・RCS・RWS・RMS・RAS・CCS・OCS・RDS も同団体の規格です。
▸ 註釈:規格本文は「a standards system owned by the global nonprofit Textile Exchange」と定義しています(p.5)。GOTS とは別団体であり、両者の規格要求は独立しています。
Tier 4 — Tier 4 / ティア4(原料生産・一次加工)
MMS が認証対象とするサプライチェーン段階。農場(原料生産)とリサイクル施設・スカラー等(一次加工)を指します。
▲ 注意:MMS 本文に登場する Tier は Tier 4 のみです(B2, p.8)。Tier 0〜3(ブランド・サプライチェーン事業者)は CCS の対象で、MMS 本文には Tier 0〜3 の要求セットはありません。
Principle — Principle / 原則(大分類)
MMS の最上位区分。1. 組織管理/2. 人権と生計/3. 土地利用/4. アニマルウェルフェア/5. 加工施設/6. チェーン・オブ・カストディ/7. グループ認証 の7つ。
▸ 註釈:条項番号は「原則.テーマ.連番」の3桁です(B5, p.11)。Principle 2 のみ4桁目のサブ条項があり、組織の規模によって適用が変わります。
Critical — Critical criterion / クリティカル基準
人の健康・安全・環境・規格の完全性に重大なリスクを及ぼしうる必須基準。違法行為・不正・システム的な欠陥を伴うことが多い区分。
▲ 注意:MMS 全体で 26 項目程度。ミュールシング禁止(4.4.18)、森林減少なし(3.6.4)、と畜前のシャックリング禁止(4.11.19)などが該当します(B4, p.11)。
Major — Major criterion / メジャー基準
対応しない場合にシステムの有効性を損ない、重大な負の影響につながりうる必須基準。
▸ 註釈:MMS で最も数の多い区分です。「必須かどうか」で言えば Critical と同じく必須であり、Major=軽い、ではありません。
Contextual — Contextual criterion / コンテクスチュアル基準
必須だが Critical / Major / Minor のいずれとも指定されていない基準。認証機関が組織の実績と状況に応じて Major または Minor と判定します。
▲ 注意:MMS の新しい考え方です。既存規格の Minor 基準は原則としてこの Contextual に移行しました(マッピング表 Introduction!B36)。「認証機関の判断幅がある」点が実務上の要注意事項です。
Recommended — Recommended practice / 推奨実践
必須ではない基準。ただし採用しない場合でも、審査の一部として評価対象になります。
▲ 注意:「任意だから審査されない」ではありません。規格は “are evaluated against these criteria as part of their audit, even if they choose not to fully adopt” と明記しています(B4, p.11)。
Leadership — Leadership criterion / リーダーシップ基準
必須ではない、意欲的・先進的な基準。組織が認証機関に依頼した場合にのみ審査対象になります。
▲ 注意:農場の GHG 算定(3.6.23)や、調達価格がサプライヤーに与える影響の年次評価(2.6.2.1)はこの区分です。つまり MMS には必須の GHG 削減目標はありません。
Intent — Intent and clarification / 意図と明確化
各基準に付される解説文。適用の考え方や例示を示します。
▲ 注意:「The intent and clarification include mandatory explanatory information」と規定されており、意図文も拘束力を持ちます(B5, p.11)。条文だけを読んで準備すると要求を取りこぼします。
Parallel production — Parallel production / パラレル・プロダクション(並行生産)
同一の製品を認証・非認証の両方で生産すること。MMS 1.1.9 は Critical 基準としてこれを禁止しています。
▲ 注意:認証素材と非認証素材の取り違えリスクが最も高い状態であるため、Critical に位置づけられています。
2. アニマルウェルフェアと農場(4 項目)
Five Domains — Five Domains Model / ファイブ・ドメイン・モデル
栄養・環境・健康・行動・精神状態の5領域から動物の福祉を評価する枠組み(Mellor et al., 2020)。MMS の Principle 4 の理論的基礎。
▸ 註釈:従来の「5つの自由(Five Freedoms)」から一歩進み、苦痛の回避だけでなく積極的な良い状態(positive welfare)を求める考え方です(p.81)。
Mulesing — Mulesing / ミュールシング
ハエ蛆症予防のため羊の臀部の皮膚を切除する処置。MMS 4.4.18 は Critical 基準として全面的に禁止しています。
▲ 注意:4.4.19 により、過去にミュールシングを受けた羊の羊毛は分別され、認証対象になりません。日本のブローカー経由の「ノンミュールシング宣言」がこの要求と一致するかを確認する必要があります。
BCS — Body Condition Score / ボディコンディションスコア
動物の栄養状態を数値化した指標。MMS 4.1.9〜4.1.11 で記録と管理が求められます。
▸ 註釈:「痩せていないか」を主観で判断せず、スコアとして記録し推移を残すことが要求されます。監査では記録の継続性が見られます。
Small-scale farmer group — Small-scale farmer group / 小規模農家グループ
旧称「communal farmer group」。MMS 7.1.3 は羊・ヤギ 500 頭未満/アルパカ 100 頭未満に加え、5 つの追加条件のうち 2 つ以上を満たす農家と定義します。
▸ 註釈:グループは原則として単一国内、または「欧州(EU+英国・ノルウェー・スイス)」内に限られ、グループマネージャー本部から 500 km 圏内という条件もあります(7.1.2)。
3. 土地利用・加工施設の環境管理(4 項目)
AFi — Accountability Framework initiative / アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアティブ
森林減少・生態系転換に関する定義と報告の国際的な共通枠組み。MMS 3.6.4 の定義の基礎。
▲ 注意:MMS 3.6.4(Critical)は「2016年6月1日以降、森林減少および自然生態系の転換が発生していないこと」を求めます。カットオフ日付が固定されている点が重要です。
SBTN — Science Based Targets Network / サイエンス・ベースド・ターゲット・ネットワーク
自然関連の科学的目標設定を進める国際イニシアティブ。Natural Lands Map が MMS 3.6.4 のベースライン確認に利用できます。
▸ 註釈:2020年以降のベースラインとして SBTN Natural Lands Map を使用できると規格が明記しています(p.74)。衛星データによる証明が現実的な選択肢になります。
EMS — Environmental Management System / 環境マネジメントシステム
環境法令遵守・指標管理・目標設定・教育記録を含む文書化された仕組み。MMS 5.1.1(大規模施設)/5.1.2(小規模施設)。
▸ 註釈:ISO 14001 認証そのものは必須ではありませんが、要求内容は ISO 14001:2015 を参照して構成されています(p.138)。
CMS — Chemical Management System / 化学物質管理システム
すべての化学品投入物と、その供給者情報(住所・連絡先を含む)を網羅した管理の仕組み。MMS 5.2.1。
▸ 註釈:「使っている薬剤の一覧」だけでは足りず、供給者の所在地まで含めた台帳が要求されます。RCS からの移行組にとっては新規要求です。
4. 化学物質・排水・エネルギー(11 項目)
SVHC — Substance of Very High Concern / 高懸念物質
REACH 規則で特定される、健康・環境への影響が特に大きい物質。
▲ 注意:MMS 5.2.5 は REACH 附属書 XIV(認可対象物質リスト)の使用を禁止し、5.2.6 は候補リスト物質が 0.1%(w/w)を超える場合、川下事業者への情報提供と、消費者からの請求に対する 45 日以内の情報提供を求めます。
REACH — Registration, Evaluation, Authorisation and Restriction of Chemicals / REACH規則(EU化学物質規制)
EU の化学物質の登録・評価・認可・制限に関する規則。
▲ 注意:日本国内のみで事業を行うリサイクル事業者であっても、MMS 5.2.5/5.2.6 により REACH の附属書 XIV と候補リストの監視が必要になります。EU 市場との取引の有無とは切り離して考えてください。
ZDHC — Zero Discharge of Hazardous Chemicals / 有害化学物質排出ゼロ(ZDHC)
化学物質管理・排水管理の業界共通ガイドラインを策定する国際団体。
▸ 註釈:MMS 5.2.12 は ZDHC MMCF ガイドラインの Foundational/Progressive/Aspirational の各水準を、5.4.6 は ZDHC 排水ガイドラインの重金属基準を参照します。ZDHC の水準が MMS の要求に直接組み込まれています。
MMCF — Man-Made Cellulosic Fibre / 再生セルロース繊維
ビスコース・リヨセル・モダール等、木材パルプ等を原料とする人造セルロース繊維。
▲ 注意:リサイクル MMCF とリサイクル綿は、B2C ラベリング閾値が 20% と定められています(POL-301 §2.6.1)。ただしこれは移行期の暫定値で、将来 30% へ引き上げる意図が明記されています。
COD — Chemical Oxygen Demand / 化学的酸素要求量
排水中の有機物量を示す指標。
▸ 註釈:MMS 5.4.7 は羊毛スカーリング排水について、粗毛 25 g/kg・細毛 45 g/kg(原毛あたり)の上限を定めています。5.4.8 は ZDHC 承認ラボの機器による 6 か月ごとの排水試験を要求します。
SDS — Safety Data Sheet / 安全データシート
化学品の危険有害性情報を記載した文書。
▲ 注意:MMS 5.2.4 は SDS が 5 年以内のものであること、かつ ANSI Z400.1-2004、REACH/CLP、または GHS のいずれかに適合することを求めます。「古い SDS がファイルに綴じてある」状態は不適合になります。
GHS — Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals / 化学品の分類および表示に関する世界調和システム
化学品の危険有害性の分類・表示を国際的に統一する仕組み。
▸ 註釈:日本では JIS Z 7252/7253 として国内化されています。MMS 5.2.4 が認める SDS 規格のひとつです。
RSL — Restricted Substances List / 制限物質リスト
製品に含有してはならない物質の一覧。
▸ 註釈:MMS 5.2.13(Contextual)は、リサイクル出力物(ペレット・チップ・フィラメント・繊維状物)を、次工程へ送る前に制限物質について試験することを求めます。
GHG Protocol — Greenhouse Gas Protocol / GHG プロトコル
温室効果ガス排出量の算定・報告に関する国際的な基準。
▲ 注意:MMS 5.5.1(Major)は大気汚染物質と GHG の定期的な測定を、5.5.2 は目標設定を求めますが、具体的な数値目標はありません。農場の GHG 算定は Leadership 基準(3.6.23)です。GOTS 8.0 の Scope 1・2 年次算定義務とは要求水準が異なります。
ISO 14064 — ISO 14064 / ISO 14064(GHG の算定・検証)
組織およびプロジェクトの温室効果ガスの定量化・報告・検証に関する国際規格。
▲ 注意:MMS では GOTS 8.0 のように明示的に義務づけられてはいません。要求水準の違いを、社内で「どちらの規格の話をしているか」を区別して説明する必要があります。
ppm / ppb — parts per million / parts per billion / 100万分の1 / 10億分の1
濃度の単位。1 ppm = 1 mg/kg、1 ppb = 1 µg/kg。
▲ 注意:MMS 5.2.16 の外部寄生虫駆除剤の残留限度は 0.5 ppm・2 ppm で規定されています。他規格の ppb 表記と取り違えないよう、社内資料では単位を必ず明記してください。
5. 統合される既存規格と移行(8 項目)
GRS — Global Recycled Standard / グローバル・リサイクル・スタンダード
リサイクル素材の含有率に加え、社会・環境・化学物質の要求を含む Textile Exchange の規格。MMS-STN-101 が置き換えます。
▲ 注意:重要:Tier 4 は GRS と MMS を同時に保持できません(POL-102 §1.2.4)が、GRS 素材は MMS 製品の適格な投入物になり、移行クレームを付けて Materials Matter Certified として販売できます(§1.6.3, §1.6.7)。
RCS — Recycled Claim Standard / リサイクル・クレーム・スタンダード
リサイクル素材の含有率のみを検証する Textile Exchange の規格。MMS が置き換えます。
▲ 注意:最重要の非対称性:RCS 素材は MMS の適格投入物になりません(§1.2.14)。分別保管が必要で(§1.4.7)、移行クレームを付けても Materials Matter Certified とは言えません(§1.6.7 NOTE 1)。在庫は RCS 証明書の取消前に販売かつ出荷を完了する必要があります(§1.2.15)。
RWS — Responsible Wool Standard / レスポンシブル・ウール・スタンダード
羊のアニマルウェルフェアと土地管理を対象とする規格。MMS が置き換えます。
▸ 註釈:マッピング表では RWS 比で 152 項目が「New」です。特に Principle 5(加工施設の環境管理)は、RWS から移行するスカーリング事業者にとってほぼ全面的に新規要求になります。
RMS — Responsible Mohair Standard / レスポンシブル・モヘア・スタンダード
アンゴラヤギ由来モヘアのアニマルウェルフェアと土地管理を対象とする規格。MMS が置き換えます。
▸ 註釈:RWS・RMS・RAS はまとめて RAF(Responsible Animal Fiber)と呼ばれます。認証書の有効期間は 3 年です。
RAS — Responsible Alpaca Standard / レスポンシブル・アルパカ・スタンダード
アルパカ繊維のアニマルウェルフェアと土地管理を対象とする規格。MMS が置き換えます。
▸ 註釈:MMS ではアルパカ固有の要求(離乳 24 週以上、去勢 12 か月以内、輸送時休息時間など)が明示的に区別されています。
CCS — Content Claim Standard / コンテンツ・クレーム・スタンダード
サプライチェーンの流通管理(チェーン・オブ・カストディ)を担う Textile Exchange の規格。MMS には置き換えられず存続します。
▲ 注意:日本のブランド・商社・紡績・機屋は Tier 0〜3 であり、MMS ではなく CCS の対象です。一次加工者は MMS と CCS の両方が必要になります(POL-101 §3.2.1)。
OCS — Organic Content Standard / オーガニック・コンテント・スタンダード
オーガニック原料の含有率を検証する Textile Exchange の規格。
▸ 註釈:OCS と RDS は MMS の対象外であり、移行政策の適用範囲にも含まれません(POL-102 §A, p.4)。従来どおり継続します。
RDS — Responsible Down Standard / レスポンシブル・ダウン・スタンダード
ダウン・フェザーのアニマルウェルフェアを対象とする Textile Exchange の規格。
▲ 注意:ダウンは MMS V1.0 の対象外で、引き続き RDS を使用します(GUI-601 p.5)。ただし POL-101 §1.2.1.c はリサイクル投入物としてのダウンを適格としており、記述に不整合があるため要確認事項です。
6. 証明書と取引の実務(15 項目)
SC — Scope Certificate / スコープ証明書
認証機関が組織に発行する、認証範囲を示す証明書。審査と認証判定の後にのみ発行されます。
▲ 注意:MMS の有効期間は Tier 4 が 3 年、Tier 0〜3 が 1 年です(POL-102 §1.1.1)。英語のみで発行され、二言語・多言語の証明書は認められません(POL-203 §1.3.1)。
TC — Transaction Certificate / 取引証明書
認証素材の出荷・販売ごとに発行される証明書。申請するのは売り手です。
▲ 注意:出荷日時点で SC が有効であることが必要(§4.1.1)。SC が停止中、または不適合・禁止措置で取り消された場合は、出荷日に有効であっても TC は発行できません(§4.1.2)。
CB — Certification Body / 認証機関
審査を実施し、SC・TC を発行する第三者機関。IDFL もそのひとつです。
▲ 注意:認証機関は 2026年7月1日までにライセンスの再申請が必要で、2028年7月1日までに MMS への認定取得が求められます(POL-102 §2.2.1, §2.2.5)。同一サイトが複数の認証機関で異なる TE 規格の認証を受けることはできなくなりました(POL-203 §2.3.1 NOTE 1)。
AB — Accreditation Body / 認定機関
認証機関を認定する機関。
▸ 註釈:認定機関は 2026年6月1日までに再申請が必要で、受理は保証されません(POL-102 §2.1.1)。認定の空白期間は、SC の PDF から認定表示が外れる形で表現されます。
TE-ID — Textile Exchange ID / テキスタイル・エクスチェンジ ID
事業者・施設を一意に識別する ID(TE- + 数字8桁)。
▲ 注意:MMS 1.1.4 は Critical 基準として、SC に記載されるすべての施設について有効な TE-ID の登録・維持を求めます。買い手に TE-ID がない TC 申請は「完全かつ有効な申請」とみなされません。
Trackit — Trackit / トラックイット(TE のデータ基盤)
Textile Exchange の証明書・取引データの管理システム。
▸ 註釈:POL-203 V4.0 は Trackit を単一の情報源(single source of truth)と位置づけ、旧「Material Ledger Policy(ASR-117)」を統合しました。データは常に Trackit 上で維持する必要があります(POL-101 §7.1.1)。
ML — Material Ledger / マテリアル・レジャー(素材元帳)
投入素材ごとの残高を管理する台帳。銀行口座の残高に例えられます。
▸ 註釈:残高が不足していれば TC は発行できません。100 kg の繊維から 95 kg の糸を作る場合、100 kg の残高が必要です(§7.1.2)。マイナス残高は 7 暦日以内に是正する必要があります(§7.1.7)。
RMDF — Reclaimed Material Declaration Form / 回収素材宣言書
リサイクル原料の供給者が発行する宣言書。供給者ごと・暦月ごとに 1 通。
▸ 註釈:MMS 6.2.4 は月次以上の頻度での取得を求めます。認証機関は 7 暦日以内、かつ当該 RMDF を参照する TC の発行前にアップロードする必要があります(POL-203 §7.3.2〜7.3.3)。2026年12月31日から必須化されます。
FPF — Farm Production Form / 農場生産量フォーム
農場の生産量を申告する様式。TC の Box 7 で参照されます。
▲ 注意:POL-203 は「本方針の公表後に開発される」と記載しており、公表時点では様式が未整備です(§7.4 NOTE)。運用開始時期は要確認事項です。
VR — Volume Reconciliation / 数量突合
投入量と産出量、販売量の整合を確認する作業。
▸ 註釈:MMS 6.2.3 は年 1 回以上の数量突合を求め、POL-203 §4.1.7 は TC 発行前の突合(元帳残高、投入量の二重使用の否定、歩留まりの逸脱理由)を必須としています。TC の数量と請求書・入出庫が合わない状態は早期に発見されます。
180 days — 180-day TC application window / TC 申請の 180 日ルール
最も早い出荷日から 180 暦日以内に完全かつ有効な申請があれば、認証機関は TC を発行しなければならない、という原則。
▲ 注意:超過した場合は tcDelayReason(E/I/A/D/F)が必要です。SC の失効・取消後は 30 日以内なら「発行しなければならない」、90 日を超えると「発行してはならない」となります(§4.2.3〜4.2.5)。
Shipment date — Shipment date / 出荷日
貨物が売り手の施設を出発した日。1 出荷につき 1 日付。
▲ 注意:物理的な移動を伴わずに所有権のみが移転する場合は、所有権移転日(請求書日付)を出荷日とすることができます。この日から 180 日の TC 申請期限が起算されます(§4.7.1)。
Subcontractor — Subcontractor / サブコントラクター(外部委託先)
法的所有権を持たずに認証素材を取り扱う委託先。委託元が責任を負います。
▲ 注意:重要:一次加工者は、独立して認証を受けたサブコントラクターでない限り、Materials Matter システム内でサブコントラクターとして稼働できません(POL-101 §3.6.2)。日本の受託加工事業者にとって直接的な制約です。
5 years — Five-year record retention / 記録の 5 年保管
規格が要求するすべての記録を 5 年以上保管すること。MMS 1.1.8。
▲ 注意:POL-203 V4.0 には認証組織の記録保管期間の規定がなく、5 年は MMS 側の要求です。GRS・RCS から移行する事業者にとっては新規要求になります。
Pre-/Post-consumer — Pre-consumer / Post-consumer / プレコンシューマー/ポストコンシューマー
消費者に届く前に発生した回収材料と、消費者の使用後に回収された材料の区別。
▲ 注意:MMS 6.1.8 は入荷する回収素材の全ロットについて、バージン材でないこと、プレ/ポストの区分が正しいことの確認と、不合格時の供給者および認証機関への通知を求めます。定義自体は規格本文になく、要確認事項です。
7. クレームとラベリング(7 項目)
B2B — Business-to-Business claim / 事業者間クレーム(未完成品クレーム)
事業者間の取引で用いる製品クレーム。必須要素は認証マーク・クレームスコープ・TE-ID・素材種別。
▲ 注意:最終製品の製造・加工の過程で、製品に付いた B2B クレームは取り外す必要があります(POL-301 §2.2.3)。請求書・領収書・工場の看板・ベールのステンシルは購買判断を左右しないため対象外です(§2.2.2)。
B2C — Business-to-Consumer claim / 消費者向けクレーム(最終製品クレーム)
消費者に向けた最終製品のクレーム。必須要素に含有率と materialsmatter.org への URL が加わります。
▲ 注意:閾値は 30%(リサイクル MMCF またはリサイクル綿を単独の認証素材とする製品のみ 20%)。閾値は製品単位ではなく、クレームする構成部分(component)単位で判定します(§2.6.1 NOTES 4-5)。
Claim scope — Claim scope / クレームスコープ
認証マークと併記する対象素材の表示。単一素材は WOOL/ALPACA/MOHAIR/RECYCLED [MATERIAL]、複数素材は BLENDED MATERIALS/ANIMAL FIBERS/HIDE-RAW HIDE/RECYCLED MATERIALS。
▸ 註釈:同一カテゴリー内の複数素材は「Animal Fibers」「Recycled Materials」、カテゴリーをまたぐ場合は「Blended Materials」を使用します(POL-301 C2, p.9)。
Certification mark — Materials Matter certification mark / 認証マーク
認証組織など、商標ライセンス契約を締結した事業者が使用できるマーク。
▲ 注意:ブランドや工場が使うのは「certification mark」であって「Materials Matter logo」ではありません。logo は Textile Exchange・認証機関・認定機関のみが使用できます(§4.1, p.24)。混同しやすい点です。
Clear space — Clear space / アイソレーション(余白)
マークの周囲に確保すべき余白。大文字 M の高さの 2 倍。
▸ 註釈:最小サイズはマーク単体で 14 × 21 mm、WOOL 併記で 19.5 × 21 mm、BLENDED MATERIALS 併記で 20.5 × 21 mm です(p.26)。日本のケアラベル・下げ札の設計時に確認が必要です。
Transition claim — Transition claim / 移行クレーム
移行期に、Tier 4 で Materials Matter Certified として販売されていない素材を含む製品に付す必要があるクレーム。
▲ 注意:具体的な表記は TE-MM-GUI-305-V1.0 が定めますが、この文書は資料一式に含まれておらず未確認です。移行クレームは川下へ伝播します(POL-102 §1.6.4〜1.6.5)。
ASR-213 — Generic material names list / 一般名称リスト(現 TE-TXL-DAT-501)
クレームに使用できる素材の一般名称を定めた一覧。
▲ 注意:クレームには「商品名、他の規格・プログラム・イニシアティブの名称、品種・種・系統の名称」を含めてはなりません(POL-301 §2.7.1 NOTE 1)。メリノ、カシミヤブランド名などの扱いに注意が必要です。
8. 人権デュー・ディリジェンスと労働(7 項目)
UNGP — UN Guiding Principles on Business and Human Rights / ビジネスと人権に関する指導原則
国連が 2011 年に承認した、企業の人権尊重責任に関する国際的な枠組み。
▸ 註釈:MMS Principle 2 は UNGP と OECD デュー・ディリジェンス・ガイダンス、ILO 中核 8 条約(10 条約)を基礎に構成されています(p.20)。日本の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」と考え方は同じです。
HRDD — Human Rights Due Diligence / 人権デュー・ディリジェンス
人権への負の影響を特定・防止・軽減し、対処について説明する継続的なプロセス。
▸ 註釈:MMS 2.1.3 は所定のテンプレート(TE-MM-TEM-113)による人権リスクアセスメントを必須とし、対象を請負労働提供者・製造委託先・輸送事業者まで広げています。大規模組織は 2 年に 1 回以上の更新が必要です。
EPP — Employer Pays Principle / 雇用者負担原則
労働者が採用に関する費用を負担しない、という原則。MMS 2.2.2。
▲ 注意:外国人技能実習生・特定技能人材を受け入れる日本の事業所では、送出機関手数料の負担構造の確認が必要になります。是正(remediation)まで求められる点が特徴です。
FPIC — Free, Prior and Informed Consent / 自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意
先住民族等が自らの土地・資源に影響する事業について同意を与える/控える権利。MMS 2.1.5。
▸ 註釈:法的に要求される場合に FPIC を実施し、侵害された場合は是正すること、および森林・土地・人権擁護者への報復禁止が求められます。日本国内では適用場面が限られますが、海外調達先では論点になります。
Grievance — Grievance mechanism / 苦情処理メカニズム
労働者・請負業者・供給者・近隣コミュニティが匿名で申し立てできる仕組み。MMS 2.1.6.3。
▲ 注意:日本の多くの企業が持つ「社内通報制度」は従業員限定であることが多く、近隣コミュニティや供給者を含まない場合、この要求を満たしません。匿名受付と報復禁止も要件です。
48/60 — 48 hours regular / 60 hours total / 週48時間・7日間60時間
MMS 2.4.2/2.4.3 が定める労働時間の基準。
▲ 注意:7 日間で 24 時間(または 14 日間で 48 時間)の休息、24 時間中 10 時間の休息、連続 6 時間ごとに 30 分の休憩も要求されます。日本の 36 協定の運用と突き合わせて確認が必要です。
125% — Overtime premium / 時間外割増率
法定・労働協約・業界標準・125% のうち最も高い率で時間外手当を支払うこと。MMS 2.4.5.1。
▲ 注意:日本の法定割増(時間外 25% 以上)は「1.25 倍」であり数値としては整合しますが、深夜・休日の扱いを含めて実際の支給額で確認する必要があります。
9. 参考:EU・日本の制度動向(3 項目)
ESPR — Ecodesign for Sustainable Products Regulation / 持続可能な製品のためのエコデザイン規則(EU 2024/1781)
EU 市場のほぼすべての製品にエコデザイン要件を課す包括的規則。DPP の法的根拠。
▲ 注意:MMS 自体は EU 規制ではありません。ただし、繊維の DPP 要求が具体化していく流れの中で、原料段階のデータをどう持つかという課題は共通しています。因果関係として結び付けないよう注意してください。
DPP — Digital Product Passport / デジタル製品パスポート
製品のライフサイクル情報をデータキャリア経由で参照できるようにするデジタル記録。
▲ 注意:MMS の要求ではありません。ただし TE-ID・SC・TC・Trackit という「機械可読なデータ」への移行は、将来の DPP 対応と方向性が一致します。あくまで背景であり、MMS 改定の直接的な原因ではありません。
CSDDD — Corporate Sustainability Due Diligence Directive / 企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令
EU の大企業に人権・環境デュー・ディリジェンスを義務づける指令。
▲ 注意:MMS Principle 2 の人権デュー・ディリジェンス要求と考え方は共通していますが、法的な要求主体・対象範囲は異なります。MMS は認証要求、CSDDD は法規制であり、混同しないでください。